美濃町線の「伝説」
(2000年4月1日現在 その1)


《その1》
 600V区間と1500V区間が混在し、複電圧車が走っている

 これは「車輛紹介」のところなどでもちらりと書かれていますが、美濃町線には600V区間と1500V区間が存在します。うちわけを示せば、徹明町〜関間と競輪場前〜田神間が600V、田神〜新岐阜間が1500Vです。
 ただし、この3つの区間のうちあとの2つは正確には美濃町線ではありません。競輪場前〜田神間は田神線、そして田神〜新岐阜間は各務原線になります。つまり、美濃町線は田神〜新岐阜間で1500V電化の鉄道線である各務原線に乗り入れているのです。
 こうなったわけは既に「沿革」でもお話しましたが、昭和40年代に入ってバスに押されて経営状態が悪化したのを受け、バスの向こうをはるべく、バスの起点と同じ新岐阜駅へ乗り入れたからです。この際、既に競輪場前から市ノ坪の岐阜工場まで敷かれていた引込み線を利用した上、その先を各務原線につなげてしまったため、このように運行区間に600Vと1500Vの2種類の電圧が混在することになったのでした。

 このため、美濃町線の電車のうち新岐阜へ乗り入れる電車には600Vと1500Vを相互変換出来る「複電圧車」が使われています。その嚆矢となった600形をはじめ、880形、そして2000年度の新車である800形などがそれです。
 電圧の切り替えは、市ノ坪電停の新岐阜寄りにある30メートルほどの長さの鉄橋で行われます。実はこの鉄橋上は両側から架線が打ちきられており、いわゆる「死電区間」となっています。電車が惰行して通る間に、600Vモードから1500Vモードに切り替えを済ますわけです。
 この際、自動的に切り替わるので、乗務員は特に何もする必要はありません。ただ惰行して切り替わるのを待つだけでいいのです。車内燈も消えないので、うかうかしてると切り替わったのが分からないまま進んでしまいます。
 ただし、880形は夏に限って切り替わったのが分かります。従来の複電圧車の中では唯一の冷房車である同形式ですが、このクーラーが実は600Vのダイレクトクーラーなのです。そのため、1500V区間に入ると一斉に死んでしまい、市ノ坪から新岐阜まで行って帰る間の車内は容赦なく外の暑さにさらされ、蒸し風呂のような状態になります。
 この状態を改善するため、一度「600Vの架線をクーラー用に引く」などという話もあったようですが、いくら何でも無理があるのでやめてしまい、現在も夏になるとこれを続けています。さすがに新車の800形でそれはないでしょうが、2つの電圧が入り混じるこの路線ならではの奇妙な現象と言えるかも知れません。

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