路線図と諸元


 まず、一番最初に「美濃町線」とは一体どんな路線であるのかを知っていただくために、路線図を挙げて概略を説明させていただきます。

[電化方式]
直流600V
(新岐阜〜田神間は直流1500V)

[軌間]
1062mm

[営業区間]
徹明町〜競輪場前〜新関〜関・新岐阜〜競輪場前
(新岐阜〜田神間は各務原線、田神〜競輪場前は田神線)

[営業距離]
18.8km(徹明町〜関間)・1.6km(新岐阜〜競輪場前)

 ……とまあ、こんなところです。
 美濃町線は大手私鉄である名鉄が営業している路線で、俗に「岐阜線」と呼ばれる600V電化区間の路線の1つです。今の時代、大手私鉄が軌道線を持っているだけでも珍しいのに、さらに珍しいのはこの路線が郊外型の路面電車だということです。そのため、総距離も全部で20キロ強と長く、市内を除けばほとんどが専用軌道となります(ただ、「全てが」というわけではないですが……。あと、何で1500V区間の各務原線が関係あるのか、ということについては「美濃町線電停めぐり」か「美濃町線の『伝説』」をご覧下さい)。

 郊外型のため、運賃は当然普通の路面電車よりは高くなっています。美濃町線の場合、徹明町〜日野橋間と田神〜競輪場前間が「市内線」扱いとされ、1乗車170円均一です。これ以外の区間は対キロ制でして、鉄道線の運賃に基づいて計算し、均一区間から通しで乗る場合は合算して20円引きになります(均一区間をはさむ場合は対キロ制区間のキロ数を合算して算出)。
 これで計算すると、徹明町〜関間が510円、新岐阜〜関間が560円となります。ちょっとお高い感じもしますが、均一区間と対キロ区間を持っている身としては仕方がないのでしょう。運転間隔が新岐阜〜関間で15分毎というのはやや少なめですが、それほど不便とも思えません。ただ、徹明町〜競輪場前間が市内線でありながら30分毎、というのはちょっと……と思います。

 ただ実際のところ、美濃町線のおかれている状況は厳しいです。並行してバスが走っている場合、バスの方に客が流れてしまったり、さもなくば車の方に流れたり……と今の日本ではよくある状況がやはりかなり存在しています。もっとも、完全な並行ではない部分もあるので、必ずしも全てがそうだとはいえないのですが……。しかし、やはり赤字の累積が激しく、関へ行かずに新関から長良川鉄道に並行する形で美濃まで行っていた元の路線の末端区間が、1999年3月31日をもって廃止となってしまいました。
 さらに悪いことに、この路線の場合は行政の扱いでもあまり恵まれているとはいえません。よく美濃町線や同朋の岐阜市内線の話で言われることなのですが、関係市町村の対応がかなり冷たく、長いこと冷や飯を食わされているのです(もっとも、美濃駅の駅舎を保存して下さっている美濃市さんのように好意的なところもあるのですが……)。 
 しかし、それでも名鉄が新車・800型を投入するなど何とか経営していこうとしていることを考えると、将来的に廃止、ということだけはないようです。全国でも珍しい郊外型で、長きにわたって地域の足として活躍して来た路線ですし、これからも頑張ってもらいたいものです。


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